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高千穂の夜神楽33番


国指定重要無形民俗文化財 高千穂の夜神楽の説明
(高千穂町教育委員会資料より)

高千穂地方に伝承されている神楽は、天照大神が天岩戸に隠れられた折に岩戸の前で天鈿女命が調子面白く舞ったのが始まりと伝えられ、古来私共の祖先は永い間高千穂宮を中心にこの神楽を伝承して今日に及んでおります。毎年十一月の末から翌年二月にかけて各地農村で三十三番の夜神楽を奉納し、秋の実りに対する感謝と翌年の豊穣を祈願するものであります。

夜神楽の順序は、行われる地域によって違っています。
大まかには以下の順序で進行しますが、下表の33番の順序は、村によってかなり異なります。

式三番
よど七番
目覚ましとして、
「御神体」00:00〜02:00頃
または「田植神楽」04:00頃
夜明けと共に、
岩戸五番〜七番
(地区による)
注連口、繰下し、雲下し

命づけ

説明

1 彦舞(ひこまい) 猿田彦命(さるたひこのみこと) 一斗枡に上り四方拜する。7番までをよど7番といい普通にはこの7番で願、成就とする。
2 太殿(たいどの) 句句廼智命(木)(くくのちのみこと)
軻遇突智命(火)(かぐ゙つちのみこと)
金山彦命(金) (かなやまひこのみこと)
罔象女命(みつはのめのみこと)
天孫降臨のとき、注連を張って高天原と定め茲に八百万の神を招く舞。
3 神降(かみおろし) 神漏伎命(かむろぎのみこと)
おんしおの命(おんしおのみこと)
天忍穂耳命(あまのおしほみみのみこと)
降神の舞で神を招く。以下三番を式三番といい一番重要で祭典には必ず舞う。
4 鎮守(ちんじゅ) 大屋津姫命(おおやつひめのみこと)
つま津姫命 (つまづひめのみこと)
土地を払い固め、神を鎮めまつる。
5 杉登り(すぎのぼり) 椎根津彦(しいねつひこ)
菟狭津彦 ・(うさつひこ)
入鬼神---武甕槌神 (たけみかつちのかみ)
昇神の舞神を送る。
6 地固(じかため) 道のたんの命
事代主神(ことしろぬしのかみ)
五十猛命(いそたけるのみこと)
玉屋命(たまのやのみこと)
剣、即ち水の徳で耕地をうるおして国造りをする宝渡しは護符の剣を氏子代表又は宿主に渡す式。
7 弊神添(へいかんぜ) 彦狭知神(ひこさちのかみ)
天日命(あめのひのみこと)
弊による払いの舞、願神楽折敷に神歌あり。
8 武智(ぶち) 弟橘姫(おとたちばなひめ)
衣通姫(そとおりひめ)
むちかむしとも言う。戦い準備の舞。
9 太刀神添(たちかんぜ) 大屋津姫命(おおやつひめのみこと)
ツマ津姫命(つまづひめのみこと)
太刀の神威により厄難を払う舞。「ハレワイサのサア」という舞手の掛け声が入る。岩潜りと共に神添の本体、全国に見られる。
10 弓正護(ゆみしょうご) 月夜見命(つくよみのみこと)
天日鷲命(あまのひわしのみこと)
経津主神(ふつぬしのかみ)
武甕槌神(たけみかつちのかみ)
弓を持ち悪魔を払う舞。宝渡しは弓矢を氏子(村人)に渡す式。
11 沖逢(おきえ) 天村雲命(あまのむらくものみこと)
思兼神(おもいかねのかみ)
事代主神(ことしろぬしのかみ)
天穂日命(あまのほひのみこと)
水神を祭る火伏せの神楽。天真名井の水を下ろすという。「吹けば行く吹かねば行かぬ」の歌が入る。
12 岩潜(いわくぐり) 武甕槌神(たけみかつちのかみ)
天目一箇命 (あまのまひとつのみこと)
手置帆負命(たおきほおいのみこと)
猿田彦命(さるたひこのみこと)
剣の舞、白刃を持ち回転などする。安産を祈る子女が帯をたすきにしてもらう。
13 地割(じわり) 荒神---素戔鳴命 (すさのおのみこと)
神主---天児屋命(あまのこやねのみこと)
弊挿---大玉命(ふとたまのみこと)
弓舞---月夜見命(つくよみのみこと)
太刀舞-武甕槌神 (たけみかつちのかみ)
かまど祭りで重要な舞、屋敷祭りをする。神主と問答あり。
14 山森(やまもり) 青龍王命(しょうりゅうおうのみこと)
赤龍王命(しゃくりゅうおうのみこと)
白龍王命(ひゃくりゅうおうのみこと)
黒龍王命(こくりゅうおうのみこと)
山の神 ---黄龍王命(おうりゅうおうのみこと)
最も素朴な舞、山の神と二頭の獅子がでる。この後、獅子は門付に出て、戸毎を祝福する。
15 袖花(そではな) 天鈿女命(あまのうずめのみこと)
ツマ津姫命(つまつひめのみこと)
石凝姥命(いしこりどめのみこと)
木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)
天鈿女命が天照大神のお使いにて猿田彦命をお迎えに行かれる舞。
16 本花(ほんばな) 天鈿女命(あめのうずめのみこと)
ツマ津姫命(ツマツヒメノミコト)
石凝姥命(いしこりどめのみこと)
木花開耶姫(このはなさくやひめ)
膳には米と榊をのせる。米の収穫を祝い又豊作を祈る。
17 五穀(ごこく) 倉稲魂命(うかのみたまのみこと)
保食神(うけもちのかみ)
大田命(おおたのみこと)
大己貴命(おおあなむちのみこと)
大宮売命(おおみやのめのみこと)
穀種を祀る各々膳に穀をのせ持って舞う。後之をまいて村人が拾い帰る。米・粟・大豆・小豆・稗
18 七貴神(しちきじん) 大国主命(おおくにぬしのみこと)
御子神七人
農神の舞、姿も十二ヶ月を表すぼんでんを負い、親神は六尺の杖を持つ。
19 八つ鉢(やつばち) 少彦名命(すくなひこなのみこと) 八撥とも書く、少彦名命が太鼓に乗って、身軽な舞をする。
20 御神体(ごしんたい) 伊奘諾尊・伊奘再尊(いざなぎのみこと・いざなみのみこと) 酒こしの舞という。酒をつくる様によせてかまけわざをし、見物人の中にも入ってくる。
21 住吉(すみよし) 住吉神・八幡神・春日神・白鬚神 海神の舞。稲荷神楽ともいう。最初から歌が入る。
22 伊勢神楽(いせかぐら) 天兒屋命(あまのこやねのみこと) 七段しばりの大弊をもち舞う。岩戸を探る舞で岩戸開きの準備である。これから岩戸五番(六番あるけど)という。
23 柴引(しばひき) 天香語山命(あまのかごやまのみこと) 天香久山の柴をひき岩戸の前に飾る。
24 手力雄命(たぢからお) 手力雄命(たぢからおのみこと) 天照大神が隠れている天岩戸を探し当てるるところ。天鈿女命と入れ替わる。
25 鈿女(うずめ) 天鈿女命(あまのうずめのみこと) 天岩戸の前の舞神楽のはじまりという。
26 戸取(ととり) 戸取明神(手力雄命)(ととりみょうじん) 天岩戸を開き天照大神に再び出て頂く。これで又世の中が明るくなった。
27 舞開(まいびらき) 手力雄命(たぢからおのみこと) ついに天岩戸を開き、天照大神に出て頂いたので、鏡を両手に持って喜び祝い舞う。
28 日の前(ひのまえ) 天兒屋命(あまのこやねのみこと)
猿田彦命(さるたひこのみこと)
思兼命(おもいかねのみこと)
天鈿女命(あまのうずめのみこと)
外注連を祭り天照大神の御出を祝福する神送りの舞。 麻のういた大弊をもつ、高千穂神楽特有の舞。
29 大神(だいじん) 矢房八郎拜鷹天神(やふさのはちろうはいたかてんじん)
道のたんの命
伊勢命(いせのみこと)
大わたつみの神(海の神)の清めの舞。願かけ願ほどきの神楽。
30 御柴(おんしば) 瓊瓊杵命(ににぎのみこと)
天村雲命(あまのむらくものみこと)
(一般には十社大明神と所の氏神という)
神主-天穂日命(あまのほひのみこと)
神人一体の古風を最もよく象徴する。二神、柴にのり、村人多数にかつがれて外注連を廻り神庭に入って神主と問答あり。
31 注連口(しめぐち) 手力雄命(たぢからおのみこと) 神送りをするところ。四人は緑の糸を取って、注連の前で舞う。「舞いおろす中のヤ 正面舞い下ろすヤ 今は正面おさめます」の歌あり。
32 繰下し(くりおろし) 天兒屋命(あまのこやねのみこと)
天日鷲命(あまのひわしのみこと)
天村雲命(あめのむらくものみこと)
天帆負命(あまのほおいのみこと)
雲おろしの用意。雲綱をとり外注連に向って舞う。
33 雲下し 神漏美命(かむろみのみこと)
手置帆負命(たおきほおいのみこと)
天兒屋命(あまのこやねのみこと)
思兼命(おもいかねのみこと)
大玉命(ふとたまのみこと)
(あるいは八百万神ともいう)
雲をおろす舞。紙吹雪が舞い散って見事な三十三番の大成就。
高千穂神社の神楽殿で毎晩奉納される夜神楽のダイジェスト版は以下の4つです。

(24)手力雄・・・手力雄命
 高天原で大力一番とされる手力雄命の出番です。
大力無双の手力雄命の舞い振りは、どこかに豪壮で迫力に富んだところがあります。
 静かな舞の中に怒涛のようなうねりの音も聞こえそうです。天照皇大神がお隠れになった岩屋戸に耳そば立てる手力雄命のユーモラスな所作も大きく見えます。
 この舞いでは手力雄命の神面は『白』です。このあと『戸取り』に姿を見せる手力雄命は、満身これ力の表現から、神面が『真赤』に変わります。

(25)鈿女・・・天鈿女命
 神話では、天鈿女命は高天原きっての踊りの名手で、天照皇大神の岩戸隠れで闇となった世界に再び陽光をと、身のはずかしさも、衣もかなぐり捨てて、踊りに踊り狂い、八百万の神々の笑いの渦の真っ只中、天照皇大神を誘い出す作戦に参加した女神様ということになっていますが----。舞は意外と優雅で、はじめて鈿女の舞を見る人は、その気品高くも美しい舞にびっくりします。
 舞う人は勿論農民であり、男性です。一般的に神楽舞いの『腰のすわり』を神楽腰と呼び、神楽腰で舞えるようになるまで五年はかかるとも言われていますが、『鈿女舞だけは神楽腰を抜いて舞え』とも言われて、大変難しい舞とされています。

(26)戸取り・・・手力雄命
 手力雄の舞では、神面は『白』で舞振りも静かな中にも荘重なものがありましたが、『戸取り』では真赤な神面をつけ、力強さと荒々しさを表現します。
 手力雄命が天の岩屋の岩戸の根を掘り、髪を振り乱し、流るる汗を拭く舞ぶりは、神面表情もその角度によって、がらりと変わります。
 ほしゃどん(舞人)は男の中の男、神面着けての熱演は我を忘れてしまうという事です。クライマックスで手力雄命は人語を発し『あら来り大神殿、何とて出させ給わぬ。出でさせ給わぬならば、我八百万の神の力を出し一方の手を取りて投げ捨てれば、山田ヶ原に着きにけり。また一方の戸を取り手投げ捨てれば、日向の国檍ヶ原にぞ着きにけり。その時、日月さよかに拝まれ給うものなりや』と唱教。力いっぱい石の扉を投げ、戸取りの舞を終わります。

(20)御神体・・・伊邪那伎命、伊邪那美命
 『御神体』の舞は、別名『酒こしの舞』『国生みの舞』とも言われています。
 いざなぎ・いざなみの二神が御二人で仲良く酒を醸し、飲むほどに酔うほどに、男・女和合のかまけわざ舞いです。
 昔は随分と露骨な濡れ場もございましたが、最近は上品すぎるほど上品な舞いになって、昔を懐かしがる向きも多いようです。舞いの心の中には五穀豊穣、家庭円満の願が込められています。御神体の神楽は、興味深い舞です。

「高千穂の神話と伝説」(21世紀TAKACHIHO委員会編)より


高千穂郷八十八社 http://www.takachiho88.net/